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オリジナルショートストーリー

日々の暮らしから(オリジナルショートストーリー)*ノンフィクションでもありフィクションでもある

 ←2012年1月1日に開設して、早や、7年目☆彡 →ただいま、小説他サイトに移行中ー☆彡
   日々の暮らしから
               香月 琉夜 
 春は出会いの季節であり、別れの季節でもある。
 春も半ばを過ぎたころ、それは突然やってきた。

 昼下がりのインターホン。
場所的に勧誘が多い場所だった。いつもなら無視して出ないところだが、今日は何となく、重い足取りではあるが、インターホンに出た。
「伊藤です」
知った名前だ。向かいの伊藤さんか。だが声が違う。おじいちゃんだったはずだが、落ち着いた、齢二〇代後半から三〇代前半くらいの男性の声だろうか。それらがインターホン越しに伝わってきた。そして、次の言葉が来て、隣の伊藤さんであるという確信に変わった。
「向かいの住人が亡くなりましたので、ご挨拶に来ました」
ドアを開けると、業者らしき作業服を着た若者が平身低頭の姿勢でこちらを上目遣いに見ている。その若者以外にも後ろにはニ、三人の作業服を着た男が、微笑でこちらを見ている。
「故人の荷物を運び出しますので、お隣ですから五月蠅くなるかと思います。ですので、ご挨拶に参りました。あと、こちらをどうぞ」
 若者の手には一通の封書があり、こちらに差し出している。
「ご苦労様です」とだけ言って、それを受け取った。中身は商品券だった。
 こんな事は初めてのことであったから、実家に連絡した。返礼をした方が良いのか。気を使わない方が良いのか。数分間であっただろうか。頭の中を巡った。今は風邪気味で寝込みからチャイムの音で起きた形ではあるが、大分回復した感じではあった。
「人間っていざとなると、気の利いた言葉一つ、言えないものなんだな。はは……」
 情けないものだ。
お隣の伊藤さんにはお世話になった。良い人程、早く亡くなるというのは本当なんだな、とつくづく思った。何はともあれ、風邪が回復に向かっている。
そうだ、これから風呂に入ろう。
              
風呂が沸いたので入った。と同時に、お隣からガタン、ドタンといった遺品を片付けているであろう音が、壁伝いに震動として伝わって来た。結構な音だな。そんな中、物思いに老けながら風呂に入ったわけだが、心情的に完全にリラックスできたとは言えなかった。
それがお隣の荷物運びが原因であろうことは想像がついた。が、商品券を受け取っているという事実が、「うるさいなぁ」などと、口ずさむことすら憚られる思いがしてくる。 
なるほど挨拶というのは、こういった効力があるんだなあ、と妙に感心した。

 孤独死――――
 この一言が頭の中に浮かんだ。
 家族がいる場合は良い。死んだことを気づいてくれる、見つけてくれるから。これが俺みたいな、一人暮らしの男性や女性、独身の人たちはどうなるのだろうかと。考えると寂しくなる。

 俺にも家族がいれば、俺が死んだとき、悲しんでくれるんだろうか。悲しく無いとしたら。そういった状況。例えば奥さんと離婚したとしても、俺が死んだことが伝えられた時、少しでも俺のことが頭に浮かんでくるんだろうか。完璧にその人のことを頭の中から消し去ることは出来ないだろう。


季節は暖かくなり、テレビの天気予報に目をやる。

 直ぐ近くのゴミ収集所にゴミを出しに外に出た。Tシャツにハーフパンツと運動靴。簡単な服装で出た。

 ゴミを出し終えた後、日課になっている朝のウォーキングを開始した。
「おはよう」
「久しぶりだね」
「ちょっと、痩せた?」
等々、近所のおばちゃんやら、おじいさんが声をかけてくれる。ささやかなことであるが、胸がほっこりする。
 
 この人たちも、いずれは死ぬ。
いつ訪れるか分からない死。誰もこれを逃れる事は出来ない。生物、人間である以上は不可避だ。それが時間という概念で遅いか、早いかの違いだけだ。
このような考えを頭の中でめぐらすうちに悲しさと、死に対する恐怖とが頭の中を支配した。風邪をひいて、人とも数日間会っていなかったから、心細くなっていたこともあるのだろう。

部屋に戻ると、地方の家族が心配して電話をよこしてくれた。久々の母の声だ。
「墓の場所くらい、聞いておけば良かったのに」
 この一言だけが印象に残った。
 後は、米を送っただの、ちゃんと部屋を片付けているか等、ドラマのワンシーンにあるような簡単な会話で終わった。だがこの何の辺輝も無い会話でもって、死についての考えが頭の中から消えていた。日常に戻ったとも言って良い。

 お隣さんの死をきっかけに、死というものを考えさせられた日であった。
 


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